いのちのいずみ Ⅱ 〈月曜日の福音〉

イエス・キリストの福音を伝えます

年間第28月曜日(2020.10.12)「ヨナがニネベの人々に対してしるしとなったように、人の子も今の時代の者たちに対してしるしとなる。

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 以前、日本語で「外人」という言葉は失礼にあたるので、かわりに「外国人」を使うようと言われました。でもよく考えてみると、どちらにしても「外の人」という意味では同じなのではないでしょうか。

 私達はみな神の前に同じ人間であるはずなのに「外の人」を受け入れることができず、中国政府がウイグル族チベット族を弾圧したり、アメリカとメキシコの国境に沿って壁が作られたりしています。ビルマロヒンギャやヨーロッパに向かうアフリカの人々など、難民となって苦しむ人も大勢います。最近では、黒人に対する警察の暴力に反対する運動がアメリカで起こって大きな注目を集めていますが、日本国内でも特定の国を出身地とする人々に対する激しいヘイトスピーチが問題となっています。「外の人」であるというだけで他者を排除しようとするこのような「よこしまな」状況は、今も続いているのが現実です。

 イエス様はユダヤ人として生まれましたが、自分の国や民族だけを愛することはありませんでした。ユダヤ人は神から特別に選ばれた民であると考える人が多かった中で、イエス様はすべての人を愛していました。今もイエス様は私達ひとりひとりを愛してくださっています。

 イエス様が他民族の話をする時は、つねに良い例として話されています。イエス様のたとえ話で、強盗におそわれて瀕死の人を助けたのは、ユダヤ人が相手にしていなかったサマリア人でした。他にも、部下を治してくれると信じたローマの百人隊長、知恵を求めてソロモンを訪ねた南の国の女王、ヨナの説教を聞いて回心したニネベの人々などについて、イエス様は話されています。自分の民族や信仰をあきらかにする時に、他民族や他の文化、宗教を見くだす必要はまったくないのです。しかし、「外の人」について良い話ばかりをするイエス様は、ユダヤ人の一部の愛国主義者にとっては憎むべき存在でした。

 天のお父さんの目で見れば、すべての人は神の子どもであり、人類全体がひとつの家族であり、神の家族なのです。天のお父さんはこの地球を作り、さまざまな自然や人間を作りましたが、国境は作っていません。「外の人」も作っていません。国境、人と人との壁を作ったのは、私達人間です。「外の人」という考え方を作ったのも私達です。

 ユダヤ人の両親のもとにドイツで生まれたアインシュタインは、国籍を問われた時に「人間」と答えたそうです。パキスタンアフガニスタンで長く医療活動に従事し、昨年銃撃を受けて亡くなった医師の中村哲さんは日本人ですが、本当の人間であると言ったほうがよいでしょう。

エス様はすべての人に対して、本当の人間として生きるように招いています。私達も回心して本当の人間として生きることができますように。

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ルカによる福音書11・29-32
 

   そのとき、群衆の数がますます増えてきたので、イエスは話し始められた。「今の時代の者たちはよこしまだ。しるしを欲しがるが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられない。つまり、ヨナがニネベの人々に対してしるしとなったように、人の子も今の時代の者たちに対してしるしとなる。南の国の女王は、裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。この女王はソロモンの知恵を聞くために、地の果てから来たからである。ここに、ソロモンにまさるものがある。また、ニネベの人々は裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。ニネベの人々は、ヨナの説教を聞いて悔い改めたからである。ここに、ヨナにまさるものがある。」